【老害?】島耕作シリーズの読書感想【クズ?】

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島耕作シリーズは、1947年9月9日生まれの島耕作の現実社会とリンクしたリアルタイム進行型の物語だ。
本のタイトルで明らかなように、島耕作は早稲田大学法学部卒業後に新卒で初芝電産に入社し、最後は社長、会長と生え抜きで昇りつめた。
順風満帆ではないサラリーマン模様が島耕作物語の醍醐味である。
初芝電産は、松下電器(Panasonic)がモデルとなっていると思われる。
初芝電産はホールディングス化し、社名をTECOT(テコット)に変更、こちらの初代社長が島耕作である。
ライバル企業としてソラーが登場するが、こちらはSONYをモデルとしていると思われる。
この電機業界の設定は現実社会に即したものとなっているので、情勢等は馴染み深いものである。

執筆順通り、課長島耕作から読むのが島耕作の世界観をわかりやすいと思う。
課長島耕作が一番倫理観が低い世界で、執筆が新しくなるたびに時代に配慮したものとなっていく。
あまり細かく書くのは良くないで、シリーズを通しての感想をざっくりと書いていく。

日本だけではなく世界情勢を反映した物語で、ある視点から見た歴史の勉強になる点が強みである。今の70代あたり(団塊の世代)の年齢の人がどのような社会を生きてきたか参考になる。ヤング島耕作から部長島耕作あたりのパワハラ・セクハラが普通で男性中心の社会から、現在の日本の社会がどれほど成長しているかそういう視点でみてしまう。会議中もみんな会議室でタバコをプカプカふかしている。時代といってしまえばそれまでだが、どれだけの人が犠牲になったのかと考えてしまう。フェミニストが変えたい社会が、まさにこの島耕作の世界と言えるだろう。リアルタイム物語なので、島耕作の役職が上がるたびに社会や社員の倫理観なども段々とアップデートされていっている。

物語の構成は
・愛人
・酒(クラブ)
・ゴルフ
の3パターンだ。
娯楽の少ない時代ですることがないのか、何十年も繰り返しである。愛人がいるのが当たり前となっている。主人公島耕作を初め、隠し子がいる幹部が多い。仕事終わりは飲みにケーション、休日はゴルフの繰り返しで可哀想とすら思えてくる。歳を取ると行動パターンを変えられないのだろうか。あぁ、老害かな。何歳になっても愛人を作って、励んでいる。令和の価値観で言えば、クズと言っても過言ではない。男女の営み中に、高齢の幹部男性が倒れるというのもワンパターンだ。島耕作の周りでは、不幸な形で命を落とす人間が多い。裏社会の人間も頻繁に登場し、残酷なシーンも多い。島耕作は主人公補正があるから、いくつになってもモテるし、大きな病気にならないし死なない。夜の世界の女性を利用して、上手く立ち回るところが読者による島耕作はクズという評価のゆえんだと思われる。
なお、島耕作は幸か不幸か妻を広告代理店の男に寝取られて、別居を経て課長時代に離婚している。
そのため、課長シリーズ後半以降は独身のため不倫問題が発生せず、現代の視点でみても相対的にややまともに見えなくもない。
上述のとおり、島耕作は離婚する前に幾度と国内外を問わずに不倫をして、未認知の子どもがいる。
ちなみに、社長時代に別な女性(課長時代から登場する重要人物)と再婚をする。

ここまで書くと、いかにも時代遅れで嫌悪感を抱く作品と思うかもしれない。しかしながら、惹きつけれる何かがあり私は学生島耕作から社長島耕作まで一気に読んでしまった。大作であり、読むのにかなりの時間がかかったが後悔はない。流石に展開がそろそろ飽きてきたので、社長で一旦連続して読むのはやめた。社会が悪いと言っても何も始まらない。島耕作はどの時代にも柔軟に対応し、初芝電産という会社に新卒で入り最後まで勤め上げた。出世や処世術が島耕作シリーズの醍醐味である。最後は初芝電産ホールディングスの社長まで昇りつめるが、必ずしも順風満帆ではない。取締役の権力闘争に巻き込まれ、飛ばされたり、クビを宣告されたり、理不尽な上司に振り回されたりと苦汁をなめる。このリアルさが、サラリーマンに支持される理由の一つだろう。毎回のようにある読者サービスのお色気シーン(乳首や陰毛有)が、支持される一番の理由かもしれないが。
反面教師として直さなければならない部分と、学ぶべき部分の両方あることが島耕作シリーズの厚みであり、読み応えである。
島耕作を含め、こうなりたいと人間的に尊敬できる人物が全くいないのが島耕作シリーズである。糞みたいな人間しかいない中で、生きて行かなければならないのがサラーリマンであり、それが社会人であるという厳しさを教えてくれる作品である。
強いていうと、大泉裕介(創業者の娘の夫・東大法学部卒)が判断力に優れた人物だと思う。管理職以上は絶望的に私利私欲にまみれた人物ばかりにあって、やはり金持ちは余裕があるということだろう。このあたりは政治家と同じで、名家の出はお金関係の不祥事はあまり起きない。また、課長島耕作時代の総合宣伝課は良い職場だなとは思った。
いずれにしても、課長島耕作など古い作品だからと読まず嫌いするにはもったいない作品である。読んでみて、良い社会勉強になった。やはり、後から付け足された学生などの若いシリーズからよりも、課長もしくは係長島耕作あたりから読むのが良いと思う。
課長時代は日本がバブルで景気が良く、物語にも勢いがある。
逆に取締役あたりからは、リアルタイム物語ゆえに日本は不景気で島耕作の目立った活躍がなく、会社自体も右肩下がりで物語にも勢いがない。課長時代に比べると憂鬱な展開が続いていき、当然島耕作も歳を取っていくのだから泥臭さや青臭さがなくなり物足りなさがある。
下記の参考文献のカッコ内に、刊行された西暦を書いているので参考にしていただきたい。
長寿漫画なので、登場人物のその後(最後)まで後々に描かれ、哀愁、切なさや寂しさなど複雑な感情を抱かせる青春群青劇でもある。
追記すると、社外取締役編まで読んでいるが懐かしの登場人物が再登場するなど面白さがある。
そして、会長編あたり、もっと言うと取締役編からは社会(情勢)勉強漫画の色が先に進むにつれて濃くなり、課長・部長編の頃の働き盛りの脂がのった楽しさはない。

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<参考文献>
学生島耕作(2014-2017) 島耕作~就活編~(2017-2018) ヤング島耕作(2001-2010) 係長島耕作(2010-2013) 課長島耕作(1983-1992) 部長島耕作(1992-2002) 取締役島耕作(2002-2005) 常務島耕作(2005-2006) 専務島耕作(2006-2008)
社長島耕作(2008-2013)
著者:弘兼憲史 出版社:講談社

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