【矢島のその後】ドラゴン桜外伝エンゼルバンクの読書感想

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内容も面白く、学びを得た。つまり、読んで良かった。

タイトルにある通り、ドラゴン桜外伝でありドラゴン桜1の3年後の世界である。
正当な後継作なので桜木健二、英語教師井野真々子、水野直美、矢島勇介が登場する。矢島の家庭教師をしていた本田先生や東大理科三類に進学した大沢くんも登場する。

内容としては、主役は井野(32歳)で転職市場や働き方について書いた話である。井野が龍山高校を退職し、転職サポート(人材紹介)会社に転職エージェントとして転職する。読者は井野と一緒に転職や労働市場について勉強し成長していくというスタンスだ。ドラゴン桜の世間のもっともらしい常識や情報に騙されず、自分で考える人間を育てるという姿勢は本作にも共通である。桜木は相変わらずの物語における指導者ポジションにいて、もう一人海老沢康生という井野の上司が解説指導おじさんのポジションいるツーボスシステムである。井野は何かあると直ぐに桜木のところに相談しに行くなど、どうやら離れられない関係のようである。この辺りは少年漫画のラブコメのように曖昧にして作者自身が楽しんでいるようである。ここに関してはまぁ大して面白くないけどな。
たかが漫画で勉強になるのかという点であるが、全14巻で十分なボリュームと必要な情報がある。自己啓発本などもA4一枚で済む話を1冊の本にするため、いたずらに長くしているのがほとんどである。そしてエッセンスがぼやけてしまうこともしばしばある。1冊から1つ学び得られれば十分なことを考えれば、エンゼルバンクから得られる情報は十分であある。物語の区切りごとにテーマがありエッセンスもぼやけていない。ドラゴン桜のように問いかけがあり、手を止めて振り返ったり考えたりする時間がある。

転職の話であるが、必要な人材や労働市場の分析など誰にとっても必要な情報について取り扱っている。企業のヒントなども取り扱われている。また、水野は大学3,4年生、矢島は大学2,3年生で新卒就活の立場と考えているので、幅広く就職活動を取り扱っている。ドラゴン桜の外伝の名前の通り、ドラゴン桜1を読み終わった人(受験生など)がそのまま、本書を読むのも想定された内容となっている。1巻が2008年1月発行、最終巻の14巻は2010年の8月発行なので、十年以上も前に書かれているので、ドラゴン桜同様ドラゴン桜2のような改訂が必要なところもあるかもしれない。その辺りは、受け身の姿勢ではなく自分で考える姿勢を活かしたいところだ。
なお、井野はドラゴン桜2には登場しないので、現時点ではエンゼルバンクが最後の勇姿である

物語の本筋ではないので、水野と矢島について少し詳し書く。水野は現役で東京大学に進学し、お金の苦労をしたくないため、とにかく給料が良いところに就職するためにOBOG訪問を重ねるなど精力的に大学生活を過ごす。アルバイトはコスパが良いと判断し、実家のスナックに落ち着いた。大沢君とすれ違いが続き、大学3年生の時点では距離ができてしまった思うようになる。高校時代の押しかけ女房のような関係ではないようだ。大学1,2年の間はどのような関係にあったかなどは不明だ。ドラゴン桜は教育本なので全体として男女の関係は描かれない。理系であるが大学院には行かず文系就職することで就職活動に悩みがあったようだが、大手総合商社に内定し、そこで働く姿まで本書では描かれている。
ドラゴン桜2では弁護士になっているので、エンゼルバンクからドラゴン桜2の間に司法試験に合格し、桜木の法律事務所に入った。ドラゴン桜2の物語は2018年という設定で始まっているので、エンゼルバンクの設定は2010年前後だからドラゴン桜2の間は約8年と考えられる。つまり、ドラゴン桜2では水野は30歳あたりだ。余談だが、ドラゴン桜2では、大沢君はIPS細胞の研究のためアメリカに留学し、水野とは疎遠となっている旨のみで登場しない。東大、弁護士、医者、IPS細胞そして後述する官僚と何ともステレオタイプでわかりやすい設定である。

一方で矢島は一年間浪人して、東大に合格する。矢島はサークルに入り先輩たちとも上手くやっているようである。大学2年生あたりでは官僚になることをかなり意識していた。物語では大学4年生で終了している。ドラゴン桜2の14巻でその後が描かれている。ここは読んでお楽しみであるので、あまり詳しくは書かないがドラゴン桜2全体に言える作者の年代的なものからくる想像力の限界の影響を受けてしまった。経済産業省の官僚を辞めて2年間世界を放浪して、難民救済のNGOでコンゴやソマリアで活動っていつの時代の話やねん!なお、矢島はドラゴン桜1から引き続き浮ついた話はない。水野とは大学ですれ違った際に話し込んだり、龍山高校の激励会に呼ばれ話したりと交流は続いている。ドラゴン桜1で矢島が水野に好意を抱いているかのような描写がたびたびあったが、水野には全くその気がないのは変わらず、ただの都合のいい話し相手のままである。お互いに社会人になってからも会っていたようだが、ドラゴン桜2では4年ぶりの再会を果たす。ドラゴン桜1でパトロンだった金持ちの矢島家(父母)はエンゼルバンクとドラゴン桜2ともに登場はしない。

エンゼルバンクを読む上で注意点としては、企業色があることだ。本作を作る上で株式会社リクルートエージェントに取材をしたのだろう。エンゼルバンクの漫画が描かれたリクルートエージェントのチラシが入っているし、本書の中でリクルートエージェントの転職エージェントのコラムがたびたび紹介されている。おんぶにだっこ感は否めない。ここでリクルートエージェントの良し悪しを言う気はないが、営利を目的した実在する特定の民間企業を題材にした作品だと考えると斜に構えて読むのが正しい読書法なのかもしれない。作者とリクルートとの関係はその後も続き、ドラゴン桜2ではリクルートが提供するスタディサプリという映像授業を教材として使用している。ここは難しいところで、ある物語でiPhoneを使っているからと言って、ただちにiPhoneの宣伝をしているとするのは尚早である場合がある。国内での最大手の情報を提供することにはそれなりに意味があることでありリアルティが出ることは間違いないし、みんなが使っているものに触れないことは逆に不自然な場合がある。しかしながら、そうは言ってもきな臭さを感じることは否めない。

いづれにしても、ドラゴン桜シリーズは好きな作品であり、一読の価値がある書である。ドラゴン桜外伝2として、水野の司法試験編と矢島の官僚物語をぜひ描いて欲しい。

<参考文献>
ドラゴン桜外伝エンゼルバンク 1-14 三田紀房 講談社 2008-2010
ドラゴン桜 1-21 三田紀房 講談社 2003-2007
ドラゴン桜2 1-17 三田紀房 講談社 2018-2021

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