宇佐見りん著「かか」の読書感想




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1.はじめに

「推し、燃ゆ」を読んでから、本作を読み始めた。
これは「推し、燃ゆ」が良かったから、購入し読み始めたわけではない。
「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し評価されている理由がよく分からなかったからだ。
本作を読んで、作者が評価される凄みについて分かったような気がした。

以下の感想には、ネタバレが含まれる点をご了承いただきたい。

2.読書感想

正直に言って読み始めは、読みづらかった。
言葉遣いが変だし、漢字をあえて避けひらがなで書かれていたり、説明されていない登場人物が出てきたりするからだ。何度も前のページに戻って文字を理解しようとした。
不思議なもので自然と途中から読みづらさはなくなった。
この壊れた世界に溶け込み始めたからかもしれない。
硬い文章で書かれていたら、創作物というよりはノンフィクション小説のようのものとして受け取っていたかもしれない。
変な言葉で綴られた世界が、この家族の歪みを際立たせていた。

話としては、特に不思議なことが起きるわけではない。
複雑な家庭であるのは確かだが、このような家庭が世の中に存在していることだろう。
何かしらの幸せが訪れるハッピーエンドを期待しながら小説を読むのが私の常だが、特に進展も幸せも家族には訪れないまま終わってしまった。純文学らしいと言ってしまえばそれまでであるが、結局のところこの小説にメッセージはあったのだろうかと考えてしまう。「推し、燃ゆ」でもそうであったが子ども(未成年)の抱える生きづらさや親ガチャがテーマなのだろうか。親を選ぶことはできない。なかなか辛い問題である。このような問題がテーマだからだろうか、私小説やドキュメンタリーのような印象を持ってしまう。物語は起承転結が大事と習うが、結の部分が薄っぺらい。その分、この問題のどうしようもなさを際立たせている。
複雑な家庭ゆえに非行に走ってしまう者(従姉妹)がいれば、主人公のように耐え忍ぶ者もいる。せめて物語の世界だけでも苦労した分だけ報われて欲しいと思うが、そう上手く大衆小説のようにハッピーエンドにはさせてくれない。主人公の家族がこの先、好転する兆しは見えない。学校の先生を初め、現実社会で助けてくれる人は現れなず世知辛い。そして、主人公は浪人生という設定だが、予備校に行っているや勉強しているなどの話は一切出ない。先行きは見えないまま話は終わっていく。
どうか悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るって欲しいと願いながら、勧善懲悪とは一線を画す爽快感がない小説であった。
そもそも、本書に悪意がある人物は登場していない。
それが一層虚しくさせられた。

3.おわりに

「他人の不幸は蜜の味」という言葉があるが本書を読んで全くそんな気はしない。
ある程度上がった人が落ちるなどの公平感がないと可哀想という哀の感情が強くなってしまう。
「かか」、「推し、燃ゆ」は似たような作品であり、もうこのテーマの起承の部分は充分かなと思った。

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