湊かなえ著「残照の頂 続・山女日記」の読書感想

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レビュー:★★☆☆☆

前作の山女日記はレビュー:★★★★★にした。

前作を読んだ方が最も気になるであろう前作との繋がりについてだが、本書は全くの新作である。
つまり前作の登場人物は一切登場しない。
前作の登場人物が魅力的だったので、正直この点は残念であった。
前作はアラサーやアラフォーの人生について描かれていて、今作は一篇以外その上の年代アラフィフや還暦辺りの人生やその回顧を主に綴ったものだ。
だから、人によってどちらが好きかは別れるかもしれない。

さてここからは前作を切り離して、ネタバレを極力避けて感想を書きたい。
本書は、全て物語が独立した短編集である。
共通点は、大学時代の登山経験が軸である物語だということだ。
随分と重い話題や非日常が続き、正直短編向きではないなと思った。
あまり親しくない年配の方に身の上話を聞かされたような何とも言えない感じだ。
50歳を過ぎ人生を回顧し感動させようとする話もあるが、どこか表面的な話や物語向けの偶然であり、あまり感情が動かされることはなかった。
タイトル回収の短編である物語だけ音大4年生と若い世代の話であったが、特に感じることもなく失踪したユウについてもあまり気にならなかった。
人生山あり谷ありで、一度きりというメッセージは伝わってきたが、個人的に響くところや共感するところがなかったというのが正直な感想だ。
何十年間も振り返り羅列していくよりは、ある時点の人生を切り取って掘り下げた方が短編向きなのだろうと思った。
魅力的に感じられる物語や登場人物がいなかったので今回のレビューとした。
最後の「コロナ・東日本大震災」に至っては、手紙のやりとりのみで小説と呼べるのかも際どい。
感動が奪われているではないが、ちょっとのことでは動揺しない自分がいた。

登山に関して言えば、前作同様緻密に描かれていた。
前作が人生の冒険だとしたら、今作は人生の回顧だろうか。
人生いろいろ、いくつになっても挑戦していきたいと思わせられる前作同様前向きな本だった。

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