「響~小説家になる方法~」最終巻までを読んでの感想

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「響~小説家になる方法~」が13巻で完結した。
高校生活までで終わるというスッキリとした完結だった。
もはや、鮎喰響という天才は原作者の想像を超えた所に行ってしまったのだろう。

この漫画を知ったきっかけは、欅坂46の平手友梨奈さんである。
去年の4月に平手さんが主演で映画化の発表があり、直ぐに全巻を揃えた。
平手さんの響役での映画化は原作者である柳本光晴さんの強い希望の上に実現した。
作品の連載開始自体は、2014年の8月と欅坂46の結成よりも早い。
そして、2017年にマンガ大賞を取ったからこそ映画化という運びになった。
もともと人気があった作品で、平手さん主演の映画化によって人気に拍車がかかった。

ただし、映画化が発表された時点で漫画の山場は越えていた(個人の感想)。
6巻で高校一年生の最年少での芥川賞・直木賞のW受賞という、
これ以上ない文学の天才を生み出した。
ここからは惰性というか、天才をどう表現すればいいのか四苦八苦している印象だ。

ライトノベルや高校生の文芸コンクールを
ものの数時間で書き上げて大賞を受賞(ライトノベルは大賞を辞退)するなどと
とにかく天才を印象付けるエピソードばかりが続く。

最初の頃は次はどういう展開になるのかワクワクしていたが、
段々と漫画やアニメで言うところのお決まりの主人公補正でお腹いっぱいになっていった。

一歩下がると無理矢理な設定にも思えるものがある。
例えば、何で普通の公立高校に祖父江リカという大物作家の娘が通っているのだろうか。
そして、響の両親は文芸とは全く関係のないごく普通の家庭ということをくどいほど強調している。
ごく普通の家庭から猟奇的な天才を生んだというギャップの設定を描きたいのだろうが、
誰にも曲げない響が家庭内では円満というのはちょっとおかしい気がする。
指が6本ある絵の粗さや暴力シーンも含めて、これは漫画だからフィクションということで流したい。

しまいには総理大臣ともお友達になるなど、
既存の権威ある賞と権力ある人物をふんだんに使った作品である。
響が留学すると言い出したときには、
これは「ノーベル文学賞」でも取らせるんじゃないかと冷ややかな思いを抱いた。
小説を書きながら片手間の勉強で
英語の試験であるIELTSも難なく留学に必要なスコアをクリアした。
とにかく天才であった。
運動があまり得意ではないという設定で現実的なバランスを取っている感じはした。

高校生活で主に文芸部の活動で青春を楽しんでいるシーンも多く描かれていた。
毎日部室に入り浸ったり、毎年に夏合宿に行ったりするなど
ところどころで「普通」の高校生と変わらないというのをアピールしてくる。
イケメンで喧嘩も強い響大好きな幼なじみがいるなど、
普通とは言えない漫画特有の設定があるのもご愛敬だろう。

とにかく響の高校生活を描き切って完結した作品であった。
終わり方は、非常に納得のいくものであった。
最後まで天才響はカッコイイままだった。
文学界を題材にした作品の最後らしく最後まで書ききらずに、
カッコイイまま勝ち逃げしていった。
響はこの先もきっと変わらないだろうという清々しさに包まれた。

漫画の中で「平手友梨奈」というワードを出してきたり、
檸檬畑48に所属するアイドルをしつこく出してきたりと
映画による影響が漫画に全くなかったと否定はできないのではないだろうか。

13巻(最終巻)で親友である祖父江リカが全く出てこなかったのは残念である。
あとがきみたいなところで、忘れていたのを原作者が思い出して慌てて書き足しように名前だけが登場する。
天才鮎喰響と情熱ある編集者花井ふみの文芸界に起こした奇跡の物語というのは納得するところだが、
「普通」の家庭の天才鮎喰響と「文学界のサラブレッド」で親の七光りになりたくない祖父江リカ
との友情の物語というのもこの漫画の醍醐味であったと思う。
この辺りもまだ終わりではないという余韻を残したとポジティブに考えたい。

批判的なことも随分と書いているが、
何だかんだで続きが気になる作品であったし、
面白さを感じていた。

私の場合、「響~小説家になる方法~」に出会ったときから、
鮎喰響=平手友梨奈だったので、響の過激な言動も微笑ましくあった。

そして映画「響-HIBIKI-」を生んだ原点であり、
この作品には感謝である。

途中で読むのを止めた人も、
最後まで読むのをお薦めしたい。
最終巻は納得いくものであった。
最後の文化祭のうさぎの着ぐるみもエキセントリックでユーモアがあった。

ヨーロッパでの響とリカの再会など、
単発での続編も期待したい。

なお、以前に書いた映画の感想はこちら(内部リンク)、
漫画の感想はこちら(内部リンク)にある。

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