長濱ねる対談収録「おまじない」の読書感想




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レビュー:★★★☆☆

どの作品からもわかりやすい前向きなメッセージがあった。心の呪縛を解いてくれるおまじないとも言える普遍性がある人生に必要な強さを描いた物語だった。
完全独立の短編集であるからか、「せやな」「わかる」あたりで留まり、深く刺さるとか動かされるとかというのはなかった。自分の中で割と整理できている事項であったことが大きく、このレビューとした。
著者が
「レベルの高い合格点を越える小説 オールウェイズ出してくれる」
ことに変わりはない。

読むきっかけは、「対談どんなときでも、寄り添ってくれる言葉」長濱ねる×西加奈子を読むためだ。西氏の作品は「さくら」を以前に読んだが、その理由は映画「さくら」に小林由依さんが出るので原作を読もうと思ったからだ。私の西氏の作品との出会いは欅坂46がきっかけとなっている。

さて、本書の感想に戻りたいが、短編集であるが故に一篇ずつ詳らかに感想を書いてしまえば、それはネタバレに他ならない。この点を踏まえ簡略的に感想を書きたい。
短編は、「燃やす」「いちご」「孫係」「あねご」「オーロラ」「マタニティ」「ドブロブニク」「ドラゴン・スープレックス」の8篇収録されている。
「燃やす」は、落ち度ゼロなのにいつの間にか責任転嫁され苦しむ話。これは忌忌しき問題であるが、日常に潜んでいる問題であるから一筋縄にはいかない。耐え難いことだが、異常者に巻き込まれたのが運の尽きという神も仏も無い出来事が起きてしまう。悪は悪、それ以下では絶対にありえない。
「いちご」は、長濱ねるさんをイメージして書いたのではないかと思いながら勝手に読んでいた。自分も環境も年とともに変わっていく。浮ちゃんという変わらない存在に救われることもある。
「孫係」は、処世術の話だ。心が健康でいられる方法、折り合いを見つけることは生きていく上で大切だ。
「あねご」は、自己肯定感の話だ。自分に合った場所に出会いたいものだ。
「オーロラ」は、都合の良い恋愛の話だ。最も俗世的な物語であった。関係を続けるも、解消するも自分で選べるところに他の短編と比べ重みを感じなった。恋愛は簡単に割り切れないこともあるだろう。
「マタニティ」は、多様性の話だ。著者の最新作「夜が明ける」とメッセージは似ている。昨日の敵は今日の友とはまた違うが、状況が急転し自分が苦境に立つこともあるから虚勢を張らず、強がったり攻撃的になることはほどほどにしたい。
「ドブロブニク」は、長い人生の話だ。景気循環のように革新的なことも続ければそのうち日常、ともすれば惰性になっていく。年齢によって見られ方も求められることも変わってくる。ふと振り返ったときに「何の成果も得られませんでした」みたいな何とも言えない気持ちなるが、そのときに読みたい話だ。
「ドラゴン・スープレックス」は、こちらも多様性の話だ。価値観やものの考え方は、家族であっても違う。家族だから逆に難しいが、なるべく否定せずに上手く折り合いをつけたいところだ。タイトルはもちろんドラゴン藤波辰爾の必殺技から来ている。

一番好きな作品は、「いちご」だ。上を見れば切りがない。技術や制度の変化は目まぐるしく社会は変わっていく。変わらない何かに安心したり救われたりすることに強く共感した。

長濱ねるさんの対談では「代償」という言葉が印象に残った。
代償という言葉から、勝手に特例加入、兼任、大学に行かず専念したことが思い浮かんだ。
こういう勝手な想像が迷惑なのかもしれない。本書の短編「オーロラ」にもギフトという言葉が出てくるが、長濱さんが特別人気なのも、容姿なども含めて華があるというギフトのおかげであるのは間違いないだろう。長濱さんにはダヴィンチ連載の夕暮れの昼寝を読んでも思う、醸し出されるほっこりさせてくれるゆるさという魅力がある。

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